今回は若手社員の話を伺うため、2017年夏に完成した海邦福祉会の新しい事務局へ伺いました。到着すると、入社2〜3年目の職員を対象とした研修の真っ最中でした。
海邦福祉会は職員の育成に力を入れており、入社1年目、入社2〜3年目、管理者、などそれぞれのステージ別に研修が行われています。新たな知識を学んだり、自分の経験を振り返ったり、自己内省し次の目標を立てたり、といった内容です。
今回取材に協力してくださったのは、入社2年目の比嘉海輝(ひがかいき)さん。研修を終えた比嘉さんに、海邦福祉会を就職先に選んだ経緯から伺いました。大学で社会福祉を専攻していた比嘉さんは、障がい者スポーツのボランティアに携わっており、卒業後も福祉関係の仕事ができないかと考えていたそうです。
「説明会に参加する中で、海邦福祉会がなんとなく面白そうだなと思いました。就労支援に興味があり、話を聞いてみたらパン屋さんを運営していることがわかったので、パン食べれるじゃん!っていうくらいの感覚で面接を受けました(笑)。」
その後無事合格をもらい希望していた就労分野へ。西海岸中部地域総合支援センターたかしほへ配属され、パン製造の就労支援を担当することになりました。しかし、最初の3ヶ月は想像していたよりも大変だったそうです。
「入社してすぐ、4月から7月くらいまでは楽しいと思える余裕がありませんでした。そもそもパンを作ったことがなかったのでまず自分自身が手順を覚えるのに必死なんですよね。全然利用者のことを見れていなかったし、関われてなかったと思います。」
「ここまでやらなければいけないのか」と社会人の責任や仕事内容に苦戦しながら毎日があっという間に過ぎていきました。
一人で仕事を任されるようになり、何度も何度もミスを繰り返しながらも少しずつ慣れていったそうです。それから徐々に「楽しいかも」という気持ちを感じられるようになりました。
「自分が楽しくなってくるとだんだん利用者にも目を向けれるようになりました。支援員という立場ではありますが、利用者に仕事を教えているのではなく、一緒に仕事をしているという感覚で今は働いています。」
自分の仕事のリズムを掴んできた比嘉さんは、ふとあることを思いつきます。
「海邦福祉会は読谷村役場に『ポポラーレ』という小さなカフェを構えています。もともとは別の部署が管理・運営していたのですが、そのカフェを自分が所属している、支援センターたかしほでやってみたいと申し出ました。」
ポポラーレは比嘉さんが入社した2017年4月当時、海邦福祉会の中でも比嘉さんの所属とは別の事業所である、発達障がいサポートセンターが運営を担っていました。発達障がいサポートセンターは、もともと『Bakery&Cafe Pod』の運営も担っており、Podとポポラーレ、2つのカフェを担当している形だったのです。
一箇所の事業所が2つのカフェを経営していたため、そのうちのひとつを「自分と一緒に働いている利用者と運営したい」と思い、業務調整に関する会議でそう申し出たのでした。
「突発的に思いつくタイプなので、やってみたいと思ったから言ってみた、という感じでしたね。」
そして、当時入社からわずか1年と数ヶ月の比嘉さんに、GOサインが出されました。承諾したのは比嘉さんの上司でありポポラーレの立ち上げメンバーである富村育子さんでした。富村さんがポポラーレを立ち上げたのも入社してすぐのことだったといいます。社歴に関係なくチャンスを与えること、職員の発案に耳を傾け可能な限り実現のサポートをすること。そういった社風は何年にもわたり、職員たちによって脈々と受け継がれているようです。
それから比嘉さんの勤務体制も変更となり、現在は週替わりでカフェポポラーレと支援センターたかしほのパン工場を行き来しています。普段パンづくりの工場で働いている利用者もポポラーレで接客の手伝いをしたりパン粉を作ったりと活躍の場が増えました。
最後に今後の目標を伺いました。
「今ポポラーレではパンの販売をメインとしていますが、これからは利用者が作れる簡単な軽食も出したいと思っています。」
「また体を動かすことが好きなので、利用者さんとチームを作って障がい者スポーツをやってみたいです。まずは自分が楽しいと思えることをして、利用者と一緒に楽しみを分かち合えればいいなと思っています。」