職員それぞれが持つ感覚、個性、色。
一人ひとりを尊重し、互いの想いを大事に育み働く方々がいます。
南風原町に設立された社会福祉法人 育成福祉会は入所施設を4ヶ所、多機能事業所が1ヶ所と5つの施設を構えており、地域生活サポートセンター、グループホーム9か所、障がい者相談支援センターなど利用できるサービスは、なんと11種類。
『利用者、家族、地域社会から信頼される深い絆を礎とする』という経営理念のもとに現在約250名の職員が働いています。
今回は障がい者支援施設の『あおぞら荘』でお話を伺いました。
訪れたのが10月とあって施設内の天井や壁にはかぼちゃやおばけの切り絵がいっぱい。手の込んだ飾り付けに思わず目を奪われます。
まず迎えてくれたのは総務課長の新垣順一(あらかきじゅんいち)さん。
そこで各施設から12名の職員を招集して新しいプロジェクトを立ち上げました。採用と育成を目的とした未来のためのプロジェクトです。
12名という人数はかなり多いですよね。
「何事も合議制でやってきたんです。」
本法人はもともと障がいを持つ子どもの親が中心となって設立されました。その名残なのかトップが指示を出して引っ張るのではなく複数の人たちが集まり、それぞれ考えを出し合い話し合うという体制を大事にしています。4月にスタートしたこの新プロジェクトでも複数の施設を越え意見交換がなされています。
たとえ時間がかかったとしても現時点ではこの方法が一番良いのだそうです。
「複数ある施設はそれぞれカラーが違うんです。そして同じように職員にもいろいろいるんですよ。面白いことを言う人、趣味をたくさん持っている人、目立ちはしないけど黙々とやり続けている人。」
だから上司から“こうあってほしい。こうありなさい”と強制をしたり“こうあるべきだ”と無理にまとめたりはしない。いろんな人がいてそれぞれのカラーがあっていいじゃないか。そんな心地よい空気がここには流れています。
プロジェクトメンバーの一人、宮城愛(みやぎあい)さんにお話を伺うことができました。宮城さんは『ワークプラザ南風』で就労移行の支援を担っています。
新しいプロジェクトのメンバーに選ばれた時は戸惑いもあったそうですが
「メンバーみんな心に火がついた感じです。スタートしたばかりでやることはたくさんあるんですけど、この先が楽しみだなと思えます。ここから形になっていく様子が見れると思うとワクワクしますね。」
学生時代は国語教師を目指していた宮城さん。大学卒業後に進む道を迷っていた中、縁あって育成福祉会に携わる機会がありました。知的障がいのある方に関わるのは初めてでした。でも純粋に“この人たちのことをもっと知りたい”と思ったそうです。
”あ、この仕事好きだな”と気づいてからはどんどんはまっていったと言います。
「利用者さんと一緒に体験し、一緒に共感し、一緒に悩んで一緒に喜ぶ。自分の世界も広がっていきました。」
利用者さんのそばにいられること自体が宮城さんの何よりの喜びです。この仕事に出会って10年が経ちました。ここまで続けてきたのは「純粋に仕事が楽しい」という想いが根本にあるからです。
「利用者さんの就労移行支援をして、その利用者さんが実際に企業で働くじゃないですか。その時企業の方から“この子最高!他にもいい子いる?”って言われるのがめっちゃ嬉しいです。」
宮城さんの話を聞いていると「利用者さんのため」という使命感が一番である必要はなく、自分の好きから始まる働き方もあるんだと気付かされます。
次に話を伺ったのは生活支援課長の國吉信作(くによししんさく)さん。『あおぞら荘』で入所施設を利用する方々を支援しています。
小学生の頃から野球を続けてきた國吉さんの転機は高校最後の大会でした。
地域の方が懸命に応援してくれたのがすごく嬉しくて、そんな地域に恩返しできないかという思いから野球部引退後はボランティア部に入部します。そこで障がいを持った子ども達と接する機会があり福祉に興味を持ち始めました。卒業後は福祉が学べる大学へ進学。大学でもボランティアに参加し、障がいのある方々との生活を通して改めてこの仕事の楽しみを実感します。
「知的障がいの方はどうしても思いを伝えるのが苦手なんで、その思いを汲み取れたらいいなと。」
「たったこれだけを汲み取ってやれないのか」という自身の未熟さを感じる時もあるそうですが、それもまた楽しいのだと言います。“人それぞれが持っている当たり前は違う”という事を日々意識して仕事に取り組んでいます。
サービス管理者としての國吉さんの合言葉があります。「まずやってみよう」
管理者として職員のやりたいことにすぐNOとは言わない。”やってみないとわからないよね。”この心意気が大事です。職員の意見から実現したことがあります。
『感覚遊びができるボールプールを作りたい』
入所施設の利用者だけでなく子どもたちも楽しめるはず。職員たちはチームを作り提案し、デザインを考え手作りで完成させました。
「私の想いは常々話しますが職員さんの想いをいかに大事にするかですよね。こういうふうに進もう、ということを常にお互い確認しながら話をさせてもらっています。」國吉さんは職員の声を自ら聞きにいくという姿勢を持ち続けています。
「上司の言うことが必ずしも正しいとは限らないじゃないですか。」職員それぞれが持っている個性や考えを尊重するからこそ利用者一人ひとりにあわせた様々なサービスができるのだといいます。最後にどんな方と働きたいかを伺いました。
「まずチャレンジする気持ちがあるかどうか、というのが大事じゃないかと思っています。楽しい時もあれば難しいときも出てくるけど職員によく言っているのは”この時間だけ役者になればいい”ということ。で、時々バカできたりはっちゃけたりできたらいいです(笑)」
そんな國吉さんに「惚れて来ました!」と熱を込めて語るのは糸数めぐみさん。
ここに至るまでの経緯を聞いてみました。
以前糸数さんが八重山に住んでいた頃、八重山特別支援学校の子どもたちと触れ合う機会があったそうです。その時間が楽しくてしょうがなかった糸数さんは、ある日八重山特別支援学校の事務員募集の文字を見たときに「ここだ!」とすぐに飛び込みました。それから濃い毎日を過ごしていたそうですが、その年の卒業式にあるお母さんが口にした言葉が今でも忘れられないとのこと。おめでとうございますとお祝いの言葉を贈ったとき『卒業はおめでとうじゃないんだよね。』とつぶやいたのだそうです。
「当時はただ悲しい言葉に聞こえたんですね。」
それからこの仕事をもっと知りたいと思うようになり浦添市の児童デイへ就職。4年間勤めていましたが、またあることにぶつかります。保護者から子どもの将来について相談を受けたとき自分が知っていることは本の中の知識に過ぎないと感じました。
「本当に保護者の相談に寄り添えているのかなと思って。子どもたちの将来にはどんな可能性があるのか、現場を見たいと思ったんです。」
そうして新たな道を探していたとき國吉課長に出会います。
「結果より過程を大事にしたい、という考えにとても共感しました。みんなでやってみよう、という言葉が心に響いてこの人と働きたいと思ったんです。」
育成福祉会で働き始めて1年。特に魅力に感じているところがあります。
「地域交流が素敵ですね。大綱綱引き祭りがあると一緒に綱を作るところから参加させてもらったんです。地元の方と掛け声をかけて一緒にお茶を飲んで。何気ないことがいいなぁ、人間らしいなぁと思えます。」
育成福祉会のイベントに地域の方が遊びに来てくれることもあります。秋の夕涼み会では沖縄大学の学生がエイサーを披露しに来てくれました。どんな方がこの事業所に向いているでしょうか。
「いい意味で一緒にバカになれる人。今は引っ込み思案かもしれないけど利用者さんと遊んで楽しめるのがいいですかね。たとえ控えめな人でもいいんです。ちょっとその空気に入ってくれるだけで。」
職員それぞれのキャラクターと個性を尊重し無理強いはしない。その気持ち良い信頼関係はそのまま利用者さんにも伝わっていくのだと思います。純粋に仕事が好きで続けてきた宮城さん。高校時代の経験がきっかけだった國吉さん。子どもの発達支援の行く先を見たかった糸数さん。
ここに集まった方々はそれぞれの想いを抱きながら今も自分らしく働いています。
あなたが持つその想いを活かしてできる支援、ここからスタートしてみませんか。